厳しい練習は逆効果! [バンド指導法]

最近TVで吹奏楽部のドキュメントを見かける事が多くなりました。
ブームなのでしょうか?

何年か前、吹奏楽部の指導に行くと子供達がこの様なドキュメントを見ていました。
私の顔を見た子供達はすぐに「先生、このバンドどう思いますか?」と聞いて来ました。

数分程みて私はすぐにこう答えました。
「皆上手だね。」
「このバンドだったら全国大会も狙えるレベルだけど…」
「この練習じゃ全国大会は難しいかな〜」

すると、子供達は「ちょっと見ただけでどうしてそんな事が分かるのですか?」と聞いて来ました。
話を聞くとこのバンドは評価は高いのに毎年もう少しの所で全国大会に行けないと言うのです。
部員も先生も「今年こそはライバル校に勝って全国に…」と努力している姿をドキュメントにした番組の様でした。

そこでは「そりゃ〜先生だもん。」「先生はコンクールの審査委員もしているんだよ。」「それ位ちょっと見れば分かるよ。」と答えるだけに留めました。

はっきり理由を言わなかった訳はそのドキュメントのバンドの先生の指導法に原因があると判断したからです。
指導者の批判になる様な事は子供達には言えませんからね!

私が先程の様な判断をした理由は非常に簡単です。
練習が無駄に厳し過ぎるのです。
子供達は先生に怯え自分達の力の半分も出せていません。
これでは高いレベルの演奏は無理ですし”音楽”をする事など出来るはずがありません。

比較的技術を中心にみる事が多い地区大会位迄なら子供達の努力で何とか行けそうですが、音楽性も大事なポイントとなる全国大会は難しいと判断したのです。

はっきり言います。
これは子供達の責任ではなく指導者の責任です。

子供達は勝つ為の道具ではありません。コンクールを通して育てるものです。

そもそも音楽は競うものではありません。
それに”命を賭ける”みたいな気持ちそのものが間違っていると私は思います。
またライバル校の生徒は同じ目標を持つ同志であり敵ではありません。

指導法に話を戻しましょう。

レベルが低い時は厳しい練習が効果的な場合もあります。
初心者相手に事細かに説明しても、言われている方は何を言われているのか分かりません。
話ばかりでは反対に嫌になってしまう事もあるでしょう。
こう言う場合は「グダグダ言わずに俺の言う通りにしろ。」と言う指導法も有りだと思います。

しかし、ある程度のレベルになったら練習の目的や演奏中の自分の役割等を理解して演奏する事も必要になってきます。
この頃からは厳しさだけではなくコミュニケーションも必要になってきます。

そして、ココからが指導者の腕の見せ所にもなるのです。
その為にも指導する方は次の様な事を知っておくと良いと思います。

人は「怒られたく無い」と言う気持ちで演奏するより「誉められたい」と言う気持ちの方が力を発揮できる。
理由の説明が無い事細かな指示は集中力を損ない、自分の役割を理解した演奏は集中力を高める。
ビクビクした状態での演奏を何度繰り返しても演奏が向上する事も集中力が高まる事も無い。


子供達に限らず多くの人は辛い事から逃げ様とします。
私などは逃げてばかりです…苦笑
その様な時分かり易い目標(コンサートやコンクール等)を持つ事は効果があります。

目標を目指す過程で辛い練習が必要になる事は良くあります。これは仕方がありませんが、結果を求める為に厳しさが必要と考えるのは意味がありませんし逆効果なのです。
つまり「今度は皆でこう言うレベルの演奏をしよう。」「その為にはこの様な練習が必要になる。」と言う具体的な目的を達成する為に発生した厳しさは良いのですが、漠然と「何が何でも勝つんだ。」と怒鳴り続け朝から晩迄辛い練習をさせダメ出しばかりの厳しさは何のメリットもありません。
特に生徒を否定してしまう指導は「子供達を育てる。」と言う最も大切な事を忘れているので絶対に避けなければなりません。

先程のドキュメントでも誉めるタイミング(努力が報われた瞬間)は何度もあるのに先生は粗捜しに夢中で気付いていませんでした。
これではダメです。

また「音が高い(低い)」とか「速い(遅い)」「もっと小さく(大きく)」等と事細かな指示を出すだけの指導はスイカ割りの指示と何も変わりません。
この様な指示の中には目的や役割の説明が無いものが多く、これはいきなり目隠しをして棒を持たせ何をするのか説明もせずにスイカ割をさせている様なものです。
これでは、指示を聞きその通りに動く事に気を取られ肝心の演奏にまで気が回らなくなってしまいます。
勿論演奏に集中する事等できません。

そして本番は1発勝負です。
良い演奏が出来ないからと言って(良い演奏が出来る迄)何度も演奏するのも集中力を損ないますし、この様な練習では本番に力を発揮出来なくなってしまいます。

練習中でも様々なチェックをする演奏と集中力を高め本番に力を発揮する為の練習を兼ねた演奏をはっきり分けるべきです。

チェックの演奏ではミスを恐れずチャレンジしましょう。そう言う演奏を繰り返す間に少しずつ演奏は向上していきますし、次の練習の課題もはっきりしてきます。
つまり、目的と役割がはっきりするのです。
こう言う演奏は反復が大切です。

本番の練習ではその時の自分の状態や技術の限界を考えながら(その時の)最高の演奏を目指しましょう。
そうする事である程度本番での実力が分かってきます。
こう言う演奏は1日1〜2回にすると効果があります。


私は厳しい練習を否定している訳ではありません。
技術の向上には厳しい練習は欠かせません。

私が否定しているのは(極端な例ですが)「とにかく辛い思いをしろ。」「そうすれば上手くなる。」の様に辛さに耐える事が目的となっている練習です。
つまり目的を達成する為の手段の一つが目的となっている厳しさを否定しているのです。

この様な厳しさは(目的が無いので)いつまでも達成感を得る事が出来ません。
残るのは辛い練習に耐えて頑張った思い出だけになってしまいます。
辛い練習に耐えて来た事に感動するのでは無く音楽に感動して下さい。

良い演奏をするバンドを見て下さい。
厳しさの中にも明るさがあります。
自由の中にも規律があります。

そして主役は演奏者であって指導者ではありません。

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