練習は短く! [トレーニング]

毎日3時間以上、休みの日も殆ど練習しているのに中々上手くならないと言う生徒さんが習いに来た事があります。休みは年末年始だけだそうです。

それを聞いただけで上手くならない原因はすぐに想像が付きました。

それをチェックし本人にも自覚してもらう為にアンブシュア、呼吸法等の基礎の確認をした後ロングトーンと倍音練習をしました。
音を出し始めて15分程するとその生徒さんは軽い過呼吸状態になり座り込んでしまいました。
この生徒さんが中々上手くならない原因は私が想像した通りです。

練習時間が長過ぎるのです。休みが無い事も影響しています。

この生徒さんは上手くなる為には長く吹く事が必要と信じていました。先生がその様に指導していたのです。
この様な指導を受けている間に練習の目的が(楽器が上手くなる事では無く)長く吹く事になってしまったのです。
長く吹く為に疲労が少なく消耗の少ない奏法になっていたので上達する為に必要な筋肉も体力も身に付いていなかったのです。

ピッチングに例えると…「毎日500球投げなければ上手くならない。」と言うコーチの指示を信用し、練習を続ける間に(いつの間にか)500球投げる事だけを目標にしてしまい、キャッチャーまでの距離を縮め、500球投げる為に全力で投げる事を避けスピードを落とす様になってしまった様な感じです。

これでは上手くなりません。

練習は量よりも質が大事なのです。

量にこだわると質が落ち、結果的に練習しないのと同じになってしまう事があるのです。
安易に練習時間を長くする事ばかり考えず、練習の質を高める工夫をして下さい。

この工夫が出来ない指導者に限って成果が上がらないと安易に練習時間を長くしようとします。

余程特殊な理由が無ければ一日の練習時間は3時間(個人練習の場合は2時間)もあれば充分ですし、成長期の子供達の場合は3時間以内に収めなければなりません。
成長期の子供の場合は3時間以上練習をしても殆ど効果はありませんし、それどころかデメリットやリスクが高くなってしまいます。

長い時間練習させたり毎日休み無く練習させる先生を「熱心だ!」と評価するのでは無く3時間以内にどれだけの練習をさせる事が出来るかで評価して欲しいと思います。

今回の例の生徒さんは自分では一生懸命練習しているつもりだったのですが、楽器にしっかりと息を吹き込む事が出来ていなかったのです。
運指や楽器の構えにも問題がありました。

これでは毎日休み無く何時間練習しようと上手くなるハズがありません。

何年も信じて練習して来た事を否定しても中々納得出来無い(納得したく無い)と思ったので(若干荒療治でしたが)楽器にしっかりと息を入れてもらう事でそれを自覚してもらったのです。

また筋肉は練習中には強くなりません。
練習と言うストレスを与えた後の休養時に成長するのです。

分かり易く言うと練習中は筋肉を傷めているのです。
だから熱を持ち筋肉痛になったりするのです。
筋肉が修復する時に強くなると言っても良いかもしれません。

休み無く練習したら筋肉が成長する時間が無くなってしまいます。
筋肉を修復する時間を作らなければ筋肉は強くなるどころか傷みが積み重ねられ取り返しがつかないトラブル(怪我)になってしまいます。

この生徒さんの練習は(筋肉を成長させる時間が足りなかった為に)長い割に効率が非常に悪かったのです。
怪我をしなかった事が幸いだったと言えます。

沢山(長く)練習すれば上手くなると言うような単純なものではないのです。


私は長時間の練習を否定しているのではありません。
コンサートで演奏する時にはリハーサル等込みで5〜6時間演奏する事は良くあります。
一日中吹かなければならない事もあります。

長時間演奏する場合には長時間演奏する為の練習をしなければなりません。
日々の練習とは別の練習が必要なのです。

日々の練習は技術を向上せさる事を目的に短時間で行わなければなりません。
時間も年齢や生徒の体力や体格に合わせて考える必要があります。
1時間が限度の生徒もいれば4時間吹いても大丈夫な生徒もいるのです。

この生徒さんも3回のレッスン(約一ヶ月)で解決に向かいました。
練習時間を短くし休む日も作ったにもかかわらず日に日に上達して行きました。
楽器を吹く時に笑顔が出る様になりましたし楽器以外の趣味を楽しむ時間も出来ました。

私のレッスンを見学していたお母さんが冗談っぽく(今迄指導していた先生に対して)言った言葉です。

「娘の時間を返せ〜!」

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