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教員時代の吹奏楽部運営 [バンド指導法]

私が中学校の教員をしていた時吹奏楽部の顧問もしていました。
その時、生徒の自主性を育て練習効率(密度)を上げる為に様々なルールを作りました。

部活動は顧問パート、部長パート、マネージャーパートの3つの組織の話し合いで運営します。
顧問の独断では決める事は出来ません。

朝練、昼練、延長練、休日練は(基本的には)行いません。
朝練は行いませんが毎朝音楽室前に集まり挨拶だけはする様にしていました。
連絡事項があればその時間に伝えていました。
練習終了後に使った教室の清掃をし音楽室でミーティングを行います。

月曜〜土曜の放課後は全て部活動はありましたが、生徒が必ず参加しなければならないのはパート練習日と合奏日の二日だけです。
それ以外の日は自由ですが殆どの生徒が自分達で練習メニューを考え練習していました。
当時(30年程前)は土曜日も授業がありました。生徒は昼食を取ってから再登校したり教室等でお弁当を食べてから部活に行くのですが、出来るだけ音楽室で食事をしてもらい様々な音楽を鑑賞してもらいました。

参加日に休む時は、顧問、部長、マネージャーの三人に理由を伝え納得させるか(面白い理由を考えて)笑わせる事ができれば休む事ができます。その際は所定の用紙にそれぞれの承認印をもらう事になっています。

学校行事や地域のイベント等で早急に曲を仕上げなければならない時には顧問が「独裁期間申請」を申請できます。
ミーティングの時に顧問が申請し全部員の2/3以上の賛成で承認されます。
承認されると(その期間は)顧問が全ての決定権を持ち指示を出す事が出来ます。

機会があれば講習会等に積極的に参加させましたし出来るだけプロにも指導に来てもらいました。
その内容や気付いた事を教則本の様にまとめ楽器毎にファイルさせました。
これはその後も増え続け部の財産になりました。

新入生には自分に合った(分かり易い)先輩の教則本を選び練習してもらいます。
奏法で悩む事があれば似た様な悩みを解決した生徒の教則本を読む様にアドバイスする事もありました。

コンクールにも参加していましたが、勝つ事が目的ではなく他の学校の演奏を聴き、自分達の演奏を第三者(審査委員)に客観的に評価してもらうのが目的でした。
勝つ事は狙ってはいませんでしたが生徒達は高い評価を受けていました。審査委員に「何故コンクール用に曲をまとめないのですか?」と書かれた事もあります。

年に一度、秋に保護者の前でソロ発表会も行なっていました。
数小節の練習曲を演奏する生徒からピアノ伴奏付きの大曲を演奏する生徒まで様々です。
今ならカラオケ伴奏で演奏する生徒も多くなるかもしれません。

ソロ発表会では演奏者以外の生徒には講評を書かせました。
講評で書くのは「良かった点」「もっと良い演奏をする為のアドバイス」の2点に限定し批判は一切しない様に注意しました。

ソロ発表会の最後に学年バンドの演奏もさせました。
30人弱のバンドだったので学年毎にすると10人にも満たない学年もありましたが生徒達は工夫して演奏していました。
学年バンドの演奏は(校内で)時々行う様にしていました。生徒達は様々な工夫をする中で沢山の事を学んで行きますし、学年バンドを作る事で学年に一つの楽器が集中する事も避けられる様になります。
ソロ発表会で演奏する曲に関しては(アドバイスを求められた時以外)私はノータッチです。

定期演奏会も行いました。
第1部は「コンクールの部」としてコンクールで演奏した曲を、第2部では「チャレンジの部」として難曲にチャレンジ、第3部は「エンジョイの部」として自分達は勿論聴きに来て下さった人達にも楽しんでもらえる演奏を心掛けました。

「コンクールの部」ではそれなりの演奏をしていた生徒達が「チャレンジの部」ではボロボロになったりしましたが失敗を恐れずチャレンジする事も大切だと考えました。
「エンジョイの部」の衣装や演出は生徒に任せました。
本番で驚かされた事も何度もありました(笑)

親睦を深める(?)為にゲームをしたり、運動の為にサッカー(突き指の心配が少ない)の練習をしたりもしました。
一度他校の吹奏楽部とサッカーの試合をした事があるのですが、課外活動の申請をした際校長に「吹奏楽部がサッカーの試合?」と笑われました。

自由練習の時間を有効活用し部活を掛け持ちしている生徒や、学校以外のクラブ等に所属する生徒もいました。

夏休みには体育の先生管理の元、プールで呼吸や全身の筋肉のトレーニングをしてもらった事もあります。
ステージで披露した事はありませんがマーチングの練習や演劇の練習も行いました。

生徒から練習時間を増やして欲しいと頼まれる事もありましたが、無駄な時間や練習を指摘し改善する事で多くの場合対応出来ていました。


生徒の代表と話し合いながら部活動を運営する事で生徒達は責任を持って行動する様になります。
練習日や練習時間を限定する事で生徒達は無駄な時間を減らし効率良く練習する様になって行きます。
また自由練習の日を設ける事で揃っていて欲しい時の欠席が非常に少なくなります。
幅広いジャンルの音楽を聴かせる事は曲作りに大変有効です。

欠席する為のルールを設ける事で生徒は無理をする必要は無くなりますし、相手を納得させる様に話す事を覚えて行きます。

意外だったのは生徒達が「独裁期間」を楽しみにする様になった事です。
効率良く練習し曲を仕上げる為に私が出す指示を自分達が部を運営する時の参考にする様になったのです。

部活動の主役は生徒であり先生ではありません。
しかし生徒に任せるだけでなく先生が見本を見せる事も大切です。
この「独裁期間」にはこの様な意味もあったのですが生徒は感覚的にそれに気付いた様です。


この吹奏楽部の運営方法は当時も話題になり注目した先生が生徒を連れて練習を見に来る事も度々ありました。
和やかなムードの中それぞれの生徒が無駄なく臨機応変に行動している姿に驚いていました。


補足説明

顧問パート:顧問、副顧問、学生指揮者
部長パート:部長、副部長、各パートリーダー
マネジャーパート:マネージャー、譜面係、セッティング係、会計etc.

月曜:自由練習(希望者の個別レッスン)
火曜:打楽器パート練
水曜:自由練習(希望者の個別レッスン)
木曜:木管パート練
金曜:金管パート練
土曜:合奏
日曜:休み

様々な名称は生徒達と一緒に考えた為最適とは思えない名称もありますが当時のまま使用しています。
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厳しい練習は逆効果! [バンド指導法]

最近TVで吹奏楽部のドキュメントを見かける事が多くなりました。
ブームなのでしょうか?

何年か前、吹奏楽部の指導に行くと子供達がこの様なドキュメントを見ていました。
私の顔を見た子供達はすぐに「先生、このバンドどう思いますか?」と聞いて来ました。

数分程みて私はすぐにこう答えました。
「皆上手だね。」
「このバンドだったら全国大会も狙えるレベルだけど…」
「この練習じゃ全国大会は難しいかな〜」

すると、子供達は「ちょっと見ただけでどうしてそんな事が分かるのですか?」と聞いて来ました。
話を聞くとこのバンドは評価は高いのに毎年もう少しの所で全国大会に行けないと言うのです。
部員も先生も「今年こそはライバル校に勝って全国に…」と努力している姿をドキュメントにした番組の様でした。

そこでは「そりゃ〜先生だもん。」「先生はコンクールの審査委員もしているんだよ。」「それ位ちょっと見れば分かるよ。」と答えるだけに留めました。

はっきり理由を言わなかった訳はそのドキュメントのバンドの先生の指導法に原因があると判断したからです。
指導者の批判になる様な事は子供達には言えませんからね!

私が先程の様な判断をした理由は非常に簡単です。
練習が無駄に厳し過ぎるのです。
子供達は先生に怯え自分達の力の半分も出せていません。
これでは高いレベルの演奏は無理ですし”音楽”をする事など出来るはずがありません。

比較的技術を中心にみる事が多い地区大会位迄なら子供達の努力で何とか行けそうですが、音楽性も大事なポイントとなる全国大会は難しいと判断したのです。

はっきり言います。
これは子供達の責任ではなく指導者の責任です。

子供達は勝つ為の道具ではありません。コンクールを通して育てるものです。

そもそも音楽は競うものではありません。
それに”命を賭ける”みたいな気持ちそのものが間違っていると私は思います。
またライバル校の生徒は同じ目標を持つ同志であり敵ではありません。

指導法に話を戻しましょう。

レベルが低い時は厳しい練習が効果的な場合もあります。
初心者相手に事細かに説明しても、言われている方は何を言われているのか分かりません。
話ばかりでは反対に嫌になってしまう事もあるでしょう。
こう言う場合は「グダグダ言わずに俺の言う通りにしろ。」と言う指導法も有りだと思います。

しかし、ある程度のレベルになったら練習の目的や演奏中の自分の役割等を理解して演奏する事も必要になってきます。
この頃からは厳しさだけではなくコミュニケーションも必要になってきます。

そして、ココからが指導者の腕の見せ所にもなるのです。
その為にも指導する方は次の様な事を知っておくと良いと思います。

人は「怒られたく無い」と言う気持ちで演奏するより「誉められたい」と言う気持ちの方が力を発揮できる。
理由の説明が無い事細かな指示は集中力を損ない、自分の役割を理解した演奏は集中力を高める。
ビクビクした状態での演奏を何度繰り返しても演奏が向上する事も集中力が高まる事も無い。


子供達に限らず多くの人は辛い事から逃げ様とします。
私などは逃げてばかりです…苦笑
その様な時分かり易い目標(コンサートやコンクール等)を持つ事は効果があります。

目標を目指す過程で辛い練習が必要になる事は良くあります。これは仕方がありませんが、結果を求める為に厳しさが必要と考えるのは意味がありませんし逆効果なのです。
つまり「今度は皆でこう言うレベルの演奏をしよう。」「その為にはこの様な練習が必要になる。」と言う具体的な目的を達成する為に発生した厳しさは良いのですが、漠然と「何が何でも勝つんだ。」と怒鳴り続け朝から晩迄辛い練習をさせダメ出しばかりの厳しさは何のメリットもありません。
特に生徒を否定してしまう指導は「子供達を育てる。」と言う最も大切な事を忘れているので絶対に避けなければなりません。

先程のドキュメントでも誉めるタイミング(努力が報われた瞬間)は何度もあるのに先生は粗捜しに夢中で気付いていませんでした。
これではダメです。

また「音が高い(低い)」とか「速い(遅い)」「もっと小さく(大きく)」等と事細かな指示を出すだけの指導はスイカ割りの指示と何も変わりません。
この様な指示の中には目的や役割の説明が無いものが多く、これはいきなり目隠しをして棒を持たせ何をするのか説明もせずにスイカ割をさせている様なものです。
これでは、指示を聞きその通りに動く事に気を取られ肝心の演奏にまで気が回らなくなってしまいます。
勿論演奏に集中する事等できません。

そして本番は1発勝負です。
良い演奏が出来ないからと言って(良い演奏が出来る迄)何度も演奏するのも集中力を損ないますし、この様な練習では本番に力を発揮出来なくなってしまいます。

練習中でも様々なチェックをする演奏と集中力を高め本番に力を発揮する為の練習を兼ねた演奏をはっきり分けるべきです。

チェックの演奏ではミスを恐れずチャレンジしましょう。そう言う演奏を繰り返す間に少しずつ演奏は向上していきますし、次の練習の課題もはっきりしてきます。
つまり、目的と役割がはっきりするのです。
こう言う演奏は反復が大切です。

本番の練習ではその時の自分の状態や技術の限界を考えながら(その時の)最高の演奏を目指しましょう。
そうする事である程度本番での実力が分かってきます。
こう言う演奏は1日1〜2回にすると効果があります。


私は厳しい練習を否定している訳ではありません。
技術の向上には厳しい練習は欠かせません。

私が否定しているのは(極端な例ですが)「とにかく辛い思いをしろ。」「そうすれば上手くなる。」の様に辛さに耐える事が目的となっている練習です。
つまり目的を達成する為の手段の一つが目的となっている厳しさを否定しているのです。

この様な厳しさは(目的が無いので)いつまでも達成感を得る事が出来ません。
残るのは辛い練習に耐えて頑張った思い出だけになってしまいます。
辛い練習に耐えて来た事に感動するのでは無く音楽に感動して下さい。

良い演奏をするバンドを見て下さい。
厳しさの中にも明るさがあります。
自由の中にも規律があります。

そして主役は演奏者であって指導者ではありません。

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